「コンラッド」


「ねー、コンラッドぉー」

就寝前の彼はベッドに腰かけながら眠そうに訊いた。

「なんですか?」
「あのさぁー…コンラッドぉー」

彼はじれったく何度も俺の名を呼ぶ。
既に半分寝ている顔だ。

「どうしたんです、陛下?眠れないんですか」
「ううんー、そうじゃなくてー。あー、んーと、やっぱ眠れないかもー…」
「俺が一緒に寝てあげましょうか」
「そぉー?嬉しいよーコンラッドぉー…」

目は閉じている。そしてなおも俺の名を呼ぶ。
隣に座った俺の肩に顔が寄り掛かってきた。
そんなに眠いのなら、ベッドでちゃんと寝た方がいいのに。

「ユーリ。さ、ほら。ちゃんとベッドに入って寝ましょうねー」
「ん…コンラッド…うん、ありがと…ふあぁ〜」

欠伸をする顔が実にかわいらしい。
実の弟がいながらも、やはりユーリもかわいい存在である。

「どうです、眠れますか?」
「んー…?えー、コンラッド、一緒に寝るんじゃなかったの…ふぁ」
「…そうですか。そんなに…」

そんなに必要とするなら構わない。陛下のためならなんでもする。
俺はユーリの隣に横になった。ちゃっかり掛け布団もかけて。

「これでいいですか」

ユーリの方を向いて訊く。
半目空いちゃってまぁ、という感じの顔で、ユーリは少し笑った。

「うん…ありがとコンラッド…」
「そういえば今日はヴォルフラムがいませんね…俺がここにいて大丈夫なのかな」

そうだ。いつもならユーリのベッドの中には婚約者であるヴォルフラムがいるはずである。
しかし何故か今日はいない。もし今、この状態で彼がこの部屋に入ってきたらどうなるか、
皆目見当はついていた。きっと、いや、絶対に大変なことになるだろう。
そんな心配もよそに寝返りをうって、さっきよりも一層近付いたユーリは答える。

「大丈夫だよぉー…コンラッドってさぁ、いっつも…おれの部屋に来ると…鍵、閉めるじゃん…」
「それは…ギュンターが入ってきてはユーリも災難かと思って…」
「そうなのー?ホントかなー…」

疑われても仕方がない。まあその辺はおいといて。
上手く誤魔化すように俺は言った。

「ほらユーリ、もう寝ましょう。俺もここにいますから、安心してください」
「うん…コンラッド…」
「!…ユーリ。…ご自由に、どうぞ」

すー。すー。というかわいい寝息をたてながらぐっすりと眠り始めた。
俺に寄り添いながら…。

俺の大事な陛下。どんなことがあっても俺がお守りする。
そう、決めたんだ…約束したんだ。だから、できるだけ彼には、側にいて欲しい。


コンラッド。


寝言でまた俺の名を呼んでいた気がした。
寝顔がかわいい。その時俺は、弟がうらやましくなった。



2006/08/21 「Written by 種春ニコ」


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